くろす内科クリニック

くろす内科クリニック|東京都台東区の内科、小児科、循環器内科

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2021年(令和3年)おもちとお風呂に気を付けよう

【2つの四角に気を付けよう】~無事に新年を迎えるために~

外来で一部の患者さん・ご家族の方にお伝えしていました。
『年末・年始は2つの四角に気を付けよう』です。いかがだったでしょうか。
それは『おもち』と『おふろ(湯船が四角)』です。
どうか健康・御無事に年末年始をお過ごしできますように。

【気道内異物、もちによる窒息事故】~毎年12月から1月にかけて餅による窒息事故が多くなります~

もちによる窒息事故に注意 
東京消防庁広報テーマ2020年12月号 年末年始の救急事故をなくそう
  より一部抜粋改変

≪餅による事故を防ぐポイント≫
□餅は小さく切って、食べやすい大きさにしましょう。
□急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込みましょう。
□乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、適時食事の様子を見るなど注意を払うよう心がけましょう。
□いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておきましょう。

≪実際にあった事例≫
▲事例1:自宅にて雑煮を食事中、餅をのどに詰まらせ目撃した家族が救急要請した。(90歳男性 重篤)
▲事例2:自宅にておしるこを食べている最中に椅子に座った状態でぐったりとし、意識がないことに気づいた妻が救急要請した。(81歳男性 重篤)
▲事例3:4等分にカットした餅を食べた際に、のどに詰まらせて意識消失した。家族が餅を取ろうと試みたものの取ることができず、意識がないため救急要請となった。(89歳女性 重篤)
▲事例4:雑煮を食べていたところ餅をのどに詰まらせ、顔色が悪くなり意識がなくなったため、妻が救急要請した。(74歳男性 重症)
▲事例5:家族とともに花見をしていた際、売店で購入した餅をのどに詰まらせたため救急要請となった。(82歳男性 重篤)
▲事例6:自宅で団子を食べていたところ急に苦しそうにして倒れ込み、呼吸ができていないようだったため、父親が救急要請した。(2歳女児 重症)

≪窒息確認の重要項目≫
     ◎話すことができない
      1)傷病者には、「息がつまったのですか」と問いかける
      2)うなずけば、「話せるか」と尋ねる
      3)傷病者が話せなければ,重篤または完全な気道閉塞が存在している
     ◎弱くて効果のない咳
     ◎吸気時の甲高い音,または音が出ない
     ◎進行する呼吸困難
     ◎チアノーゼ(顔色や唇の色、手足の指の色などが青白い)

≪窒息患者の症候≫
           咳、むせ込みあり
               ↓
      「息がつまったのですか」と問いかける
               ↓
      うなずけば、「話せるか」と尋ねる→→→→【会話できる】
               ↓              ↓
               ↓  傷病者反応があり、咳や喘鳴を聴取する = 部分的な気道閉塞 
               ↓              ↓
               ↓       呼吸が確保されている間は
               ↓              ↓
               ↓  自発的に咳と呼吸の努力をするように傷病者を促す
               ↓              ↓
               ↓  症状が改善されず部分的閉塞が続くなら119番通報を行う
               ↓    ↓
               ↓    ↓
               ↓  悪化する場合あり注意!
               ↓    ↓
               ↓    ↓
              【会話できない】
          【うなずくのみで話せない】 時にユニバーサルチョーキングサインあり
               ↓
         完全な気道閉塞発生   
               ↓              
        気道異物の処置法を行う→→→→→→異物が出る
               ↓                      
          異物がまだ出ない   ※反応(意識)がなくなるまではそのまま処置を続ける※
               ↓                       
        気道異物の処置を継続→反応ある→※処置を継続※→→→→→異物が出る
               ↓    
          反応がにぶくなってきた  
               ↓         
          反応がなくなった
               ↓
          処置中止するとともに
         心肺蘇生(胸骨圧迫)開始

ユニバーサルチョーキングサイン:喉のあたりを両手でかきむしるような万国共通の窒息サイン
~「救急医療の現状と気道異物による窒息への対応」 木下 耳鼻咽喉科展望57:2;60~66,2014より一部抜粋改変

(参考)
○気道異物による窒息の傷病者では,最初は反応があっても,その後反応がなくなる場合や最初から反応がない場合などさまざま
○気道異物による窒息傷病者の処置の流れは,傷病者の反応(意識)の有無によって異なる
○東京消防庁ホームページでは背部叩打法を掲載 (他の方法は記載なし)
別方法に『腹部突き上げ法』 がある ←腹部外傷可能性あり・妊婦禁忌・赤ちゃん禁忌
腹部突き上げ法:日本医師会編 http://www.med.or.jp/99/kido.html リンク集に掲載

※注意※
以下では医学的に判明している対処等を列記してあります。
119番通報では、救急車の手配に加え、通信指令室から『対応の方法』の口頭指導があります。
状況を確認し、指示に従って処置することが最重要なのは言うまでもありません。 


【気道異物の処置法】
咳をすることができればできる限り咳をさせる
        ↓
咳できない・声出せない・会話できない
        ↓
    背部叩打法(別の方法もあり、後述してあります)


【背部叩打法のやり方】 ~東京消防庁公式ホームページより~
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/stop/stop-old03.html
1 反応がある場合
・傷病者(詰まらせた人)が立っている・座っている場合
 (1)やや後方から片手で傷病者の胸もしくは下あごを支えて、うつむかせる
 (2)もう片方の手のひらの付け根で、傷病者の肩甲骨と肩甲骨の間を強く4~5回、迅速に叩く
 (3)回数にとらわれず、異物が除去されるか,反応がなくなるまで繰り返し行う
 (4)反応がなくなれば、人を呼ぶ+119番への通報+傷病者を仰向けにして心肺蘇生術(胸骨圧迫)を開始
2 反応がなくなった場合 または 最初から反応がない場合
◎反応がなくなれば、人を呼ぶ+119番への通報+傷病者を仰向けにして心肺蘇生術(胸骨圧迫)を開始

※異物による気道閉塞が存在すると呼気吹き込みを試みても有効な換気はできず、胸郭の挙上が観察されない
 ※胸骨圧迫による心肺蘇生術は異物が移動して気道が開通するのに十分な気道内圧を作ることが可能

【もちの窒息事故-その特徴】
≪特徴1 搬送年齢は65歳以上の高齢者が多い≫
過去5年間で餅などをのどに詰まらせて救急搬送された方は毎年100人前後。
9割以上が65歳以上の高齢者。
≪特徴2 発生時期は年末年始~冬場が多い≫
餅などをのどに詰まらせて救急搬送された搬送人員は、過去5年間で、12月68人・1月184人・2月42人で、12月~2月までで全体の約60%を占めている。
≪特徴3 もちによる事故は半数が重症以上≫ 
餅などをのどに詰まらせて救急搬送された救急搬送時の初診時程度別搬送人員(H26-30年中)
  軽症  32.6%  157人
  中等症 16.4%  79人
▲重症   8.1%   39人
▲重篤   36.9% 178人
▲死亡    6.0%  29人    
-----------------------------------------------------------------------------------------
                       ※注意※
以下では医学的に判明している対処等を列記してあります。
119番通報では、救急車の手配に加え、通信指令室から『対応の方法』の口頭指導があります。
状況を確認し、指示に従って処置することが最重要なのは言うまでもありません。 
  
             ≪腹部突き上げ法・胸部突き上げ法・背部叩打法のどれを行うべきなのか≫
○処置法はノズル付き家庭用掃除機(今のところ対処法として公的に明確な手段ではない)使用も含め種々存在している
○腹部突き上げ法が医学系学会で共通しているが、複数を組み合わせたりや単一であったりなど統一した見解がない
これは現場に居合わせたバイスタンダーの力量に考慮した結果ともとれる。
○共通なのは処置中に意識を失ったら処置中止して蘇生処置を開始する点
○妊婦と1歳未満の乳児には腹部突き上げ法は禁忌 
・おとなには
→腹部突き上げ法を優先して[背部叩打法+腹部突き上げ法]を交互に行う
 または腹部突き上げ法のみを行う
 または背部叩打法のみを行う
・妊婦には
→背部叩打法を行う、腹部突き上げ法は禁忌
 または妊婦の異物除去法には十分な確証がない
・1歳未満の乳児(赤ちゃん)には
→[背部叩打法+胸部(腹部でない)突き上げ法]を交互に行う 
 または背部叩打法のみを行う、腹部突き上げ法は禁忌 
・1歳以上の小児には
 →腹部突き上げ法を行う  と記載されている
(引用元)
○日本救急医学会 「喀出させる緊急処置法としてHeimlich法(腹部突き上げ法)がある。救助者が患者の背部から両手を患者の臍部直上の腹部に回し,拳を作って組み,素早く内上方に突き上げる。これは小児,成人に対しておこなう方法で,一歳未満の乳児に対してはおこなわない。一歳未満の乳児に対しては,乳児を救助者の腕にのせ,背部叩打法と胸部突き上げ法をおこなう。」http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0910.htm ←リンク切れ
○日本医師会 「異物除去は可能であれば腹部突き上げ法を優先し、一方で効果がなければもう一方の背部叩打法を試みます。乳児には背部叩打法のみ行います。」 http://www.med.or.jp/99/kido.html
○日本小児呼吸学会 「1歳未満の乳児には胸部突き上げ法(←腹部ではない)と背部叩打法を数回ずつ交互におこない、1歳以上の幼児には腹部突き上げ法を行うhttp://jspp1969.umin.jp/ind_img/cc03.pdf
○アメリカ心臓病学会
「気道異物除去のいずれの方法をまず最初に行うかは不明である。意識のある受傷者には背部叩打法、腹部突き上げ法、胸部突き上げ法が除去に成功したとの症例報告がある。異物除去を達成するためにはしばしば複数の手技が必要とされる。」
「気道閉塞が重篤な場合、小児に対しては腹部突き上げ法を異物が除去されるか傷病者が意識を失うまでは行う。乳児に対しては5回の胸部突き上げ法に続き5回の背部叩打法を異物が除去されるか傷病者が意識を失うまでは行う。乳児に対しては、腹部突き上げ法は推奨されない。比較的広範に保護されていない肝臓に傷害を起こしうるからである。」
「異物気道閉塞の対処方法である背部叩打法、胸部突き上げ法、腹部突き上げ法は意識のある成人と1歳以上の小児で有効であり、どれを最初に行うべきかは十分な確証が得られていない」
「複数の方法が必要とされる場合もあり得るが、気道閉塞が解除されるまで速やかに施行すべきである」
「意識のない傷病者に対しては心肺蘇生術を行うべきである」
「腹部突き上げ法では外傷の発症が報告されている」
「気道内異物除去ののための用手掻き出し法は,意識がない傷病者に対して気道内に異物が目視できる場合において行うべきである」
「異物が途中で見えれば手で取る、見えない場合はやみくもに指でさぐらずに蘇生に専念する」
「肥満者や妊婦の異物除去に対する処置方法については充分な確証がない」 
心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン」2005年アメリカ心臓病学会)より一部抜粋改変 2005 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Part2 Adult Basic Life Support Foreign-Body Airway Obstruction  November29,2005, Volume112, Issue22 suppl   Pediatric Basic Life Support November29,2005, Volume112, Issue22 suppl http://circ.ahajournals.org/content/112/24_suppl/IV-156 ←リンク切れ
 
(参考)【掃除機と気道異物】
○「なお、家庭用掃除機で直接吸引を行うことは気管や気管支に入り込んだ異物には有効ではなく、舌損傷、乳幼児では自発呼吸困難を招くこともあり勧められないとの指摘がある。」~(案)評価書 食品による窒息事故2010年食品安全委員会 食品による窒息事故に関するワーキンググループより一部抜粋
○「また、摘出が難しい異物に対して、掃除機の先細(隅用)ノズルが有効であったとの報告もあります。最近では家庭用の掃除機に容易に装着可能なノズルも市販されており、嚥下障害の多い施設での常備が望まれます。窒息事故を防ぐには現場での初期対応が最も重要です。あわてずに行動することが大切です。」日本気管食道科学会ホームページ 窒息より一部抜粋改変 http://www.kishoku.gr.jp/public/disease02.html
注)上記ホームページ内では背部叩打法・腹部突き上げ法に次いで、ノズルの装着した掃除機の使用について触れている
---------[掃除機だけでなんとかなるものではない]----------------------------------------------
上記ホームページ内には餅の記述はありません。家庭での閉塞での掃除機に関する記述などもなく、初期対応での掃除機の具体的な運用の仕方(異物の種類・大きさ、複数の異物除去法の中で掃除機を使うタイミング、適応する患者の状況、合併症)等についても言及されていません。施設内の普段の食事が原因となった摘出が難しい異物に対して医療機関にある吸引器のように使用する代替機になるものを想定しており、そうであれば通常吸引器だけでは窒息に対応はできないため、叩打・突き上げ法・蘇生処置前提での補助的なものという印象です。
私感ですが、上記ホームページ内容を言い換えれば、『窒息を起こさないように落ち着いて初期対応をおこなうことが最優先されることであり、掃除機が最優先されるものとはいえない、掃除機はその陰圧は吸引器より高い、その目的達成のための手段の一つとして施設に存在していた方が無い場合と比べて有効な手段が1つ増えるので望ましい。』、と読み取りました。
なお、吸引器による気管吸引についての手引きとして「気管吸引ガイドライン2013(成人で人工気道を有する患者のための)日本呼吸療法医学会」、「喀痰吸引等指導者マニュアル(第三号研修) 厚生労働省」等がありますが、いずれも分泌物の吸引(分泌物は餅等と比べて性状・大きさ・重さなどが全く異なる)を想定しており、当然異物閉塞には触れていません。
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○「気道が完全に閉塞(気道閉塞)した状態が続くと,すぐに治療を開始しないと,数分で死に至る可能性がある。」~「救急医療の現状と気道異物による窒息への対応」 木下 耳鼻咽喉科展望57:2;60~66,2014より一部抜粋
○「近藤氏は吸引でねばらず、喉頭展開して直視下に異物除去鉗子でつまみ出すのが一番確実と話す。」~餅のつまり 国立病院機構名古屋医療センター集中治療科ER室近藤室長 日経メディカル1月号2018より一部抜粋) 
⇒ノズル付掃除機で上記の確実性にどの程度迫れるか? 慌てずに数分内で確実な除去達成が要求されている(そもそも喉頭展開の時点で病院内におり、意識レベルの低下・消失があるか麻酔で意識レベルを落としてアンビューと酸素の補助呼吸を受けている状況)
⇒現場の異物除去に掃除機だけで対応するのは役不足(異物除去それだけを確実に解消するには病院でないと困難)、かつ、現場で異物が取れたとしてもそれ以前に心肺停止を伴えば数分で死に至る
⇒異物除去処置を行いながら反応を注意深く観察し続け、異物が出た出ないにこだわらず、反応が無くなったらすぐに胸骨圧迫の心肺蘇生を開始することが重要 途中で異物が見える場合もあり、指で掻き出してもよいが取り出しに固執して蘇生処置を止めてはならない
 (胸骨圧迫による心肺蘇生術は異物が移動して気道が開通するのに十分な気道内圧を作ることが可能)

※大切なこと(重要度ではなく手順の順番別)
1)できるだけ早く異物排除の処置を始めること。
2)傷病者の意識の有無を常に観察すること。異物排除処置の手技に集中し過ぎないこと。
3)反応がなくなったらすぐに異物除去処置を中止して心肺蘇生処置を始めること。
完全閉塞の場合、詰まらせてから意識消失・心肺停止になるまでが、ほんの数分後。『慌てずに対応する』とあちこちでいわれているのは、異物排除処置を可能な限り早く開始するため(排除ができなくとも致し方ない)と、排除処置をしているうちに、あっという間に状態が変貌すると蘇生処置まで思いつかない可能性があるため。
他に大切なのは、『人を呼ぶ・119番する』もどこかの場面で忘れずに行うこと。
なお、119番に救急車要請の電話をすると指令室から、救急車の手配に加えて、その場ですぐに行う対処法を口頭指導で指示されます。

【アメリカ心臓病学会の対処法は大人の異物除去方法を組み合わせはするが具体的に言及していない...なぜ?】
高度肥満などの体格の違い、年齢層の違い? そもそも気道異物閉塞自体が少ない? 異物窒息の予後が日本の方が不良? 異物の種類が日本と違う=もちと比べて肉や魚の方がいずれの方法でも除去が容易? 逆に肥満者・妊婦では対処法が未推奨=体格上背部叩打法でも救命し得ないことが多い? ←全て私の妄想です
(参考)「異物内容は,パンが最も多く16例,次いで餅が10例で,米飯5例,肉片,魚片,野菜が各4例,ビスケット,羊羹,うどん,天ぷら,豆腐,はんぺん,粉薬を包んだオブラートが各1例ずつであった。(中略)Solid massとなっていたのは,主にパン,餅,肉片などで,合計31例であった。(中略)本研究結果では,異物内容としてパンや餅が全体の52%で,諸外国で多いとされている肉や魚は8%に留まっている。本邦の食生活の特徴であるのかもしれない。」 ~目撃のある気道異物による窒息症例50例の検討 川原ら 日救急医会誌2009;20:755-62より一部抜粋改変
(参考)「原因食品の物性の検討で、切り餅は硬さと付着エネルギーの温度による影響が大きかった。実際に食べる状態を想定すると、50~60℃の状態は器から口に入れた直後といえるので、軟らかく、付着性が小さい(伸びやすい)。しかし、口の中では、外気温や体温などの影響で、餅の温度が低下し(40℃程度)、硬くなり、付着性も増加することがこの結果から予測される。また、この状態は咽頭・喉頭部に張り付きやすい状態ともいえる。今後は伸びやすさの検証と、食塊になった状態の物性についても検証する必要性がある。」~厚生労働科学研究補助金総括研究報告 食品による窒息の現状把握と原因分析研究より一部抜粋改変

【意識が無くなるまで続けます ~この文章は誤りではありません】 
日本医師会の救急蘇生法では、『異物除去は腹部突き上げ法を優先し異物がとれるか意識が無くなるまで続けます』とあり、「意識が戻る」ために行うのであって、「意識が無くなるまで」は表現は誤っていると日本医師会の事務局に電話をしたことがありました。まるで意識をなくすことが目的で除去法を続けるように違和感を感じたからです。後にAHAの原文で確認したところ、“until the object is expelled or the victim becomes unresponsive”とあり、翻訳に問題はありませんでした。私の意図する「意識が戻る」は、「異物がとれる状況まで」と同じ内容を言っているに過ぎません。除去法を続けているうちに、いずれ意識を失いかねないので、意識が無くなったら次に蘇生処置に切り替えるということを、この文脈から読み取らなければならなかったのですが、意識がない傷病者に対して、いつか意識がもどると誤解してそのまま除去法を続けることは、やってはいけない行為であり、目の前で気道閉塞傷病者に直面している救助者の方が、読んだ文面通りに受け止めるであろうと意図された、実に推敲された文章だったと悟った次第です。 
講釈;「意識が無くなるまで続けます」=「意識がある間は続けます」 
用例;「粉っぽさがなくなるまで混ぜる」=「粉っぽさがある間は混ぜる」

【おふろの入浴事故】~高齢者(65歳以上)が浴槽でおぼれる事故が多く発生しています~

東京消防庁ホームページ STOP!高齢者の入浴中の「おぼれ」
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/stop/stop-old01.html
および、令和元年度死体検案研修会資料より一部改変・抜粋

≪入浴事故予防のための対策≫
 東京都健康長寿医療センター研究所ホームページ~高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?
 -特徴と対策より一部抜粋 https://www.tmghig.jp/research/topics/201402/
□湯温は39~41℃くらいで長湯をしない
□脱衣場や浴室の室温が低くならない工夫をする
□食事直後や深夜に入浴しない
□気温の低い日は夜早めに入浴する
□心肺の慢性疾患や高血圧症をもつ人では半身浴が望ましい


≪実際にあった事故例≫
▲実例1:母親がお風呂から出てこないので、心配した息子が様子を見に行ったところ浴槽内に沈んでいる状態になっていたため、救急要請した。(89歳女性 重篤)
▲実例2:自宅で息子が付き添い入浴をしていたが、息子が5分ほど浴室を離れている間に浴槽内で溺水しており、救急要請した。(83歳女性 重症)
▲実例3:同居する息子が仕事先から帰宅した際、居室内の電気は点いていたが父親の姿が見えなかったため浴室を見に行ったところ、浴槽内で意識がなかったため救急要請した。(78歳男性 重篤)
▲実例4:帰宅した妻が浴槽内で苦しがっている夫を発見し、隣人に助けを求め、隣人が救急要請した(78歳男性 重篤)

≪入浴後どれくらいで異変が起きているのか≫
異変発生時の判明している入浴時間の約8割が「30分以内」

≪家族が気が付いた異変の徴候≫
!!入浴時間過長(いつもより長い、なかなか出てこない)!!
!!音がしない(水をはねる音や体を洗ったりする音がしない)!!
!!返事がない(声をかけるも返事がない)!!
!!水音がやまない(給湯音・追い焚き音がいつまでも続く)!!
!!異音(バタン・ガタッと倒れる音、ブクブクと沈む音等)!!
!!異声(家族を呼ぶ声、うなり声、うめき声)!!
!!介助中わずかに目をはなし溺没しているのを発見  突然溺没および昏倒!!
畦柳ら 心臓Vol32 SUPPL.5(200) 第12回心臓性急死研究会「東京都23区内における入浴中の死亡」より一部抜粋改変

≪特徴1 搬送年齢は65歳以上が多い≫
平成28年度の65歳以上の入浴事故による救急搬送人数は530人で、全体の89.1%を占めている。(東京消防庁管内で救急搬送されたもの。東京都のうち、稲城市、島しょ地区を除く地域)

≪特徴2 発生時期は冬場が多い≫
12月~2月の65歳以上の救急搬送人員は1年中の搬送人員の52%を占めており、冬場に集中している。

≪特徴3 入浴事故は重症度が高い≫
軽症  1.9%  52人
中等症 7.8%  217人
重症  5.9%  164人
重篤  40.0% 1,116人
死亡  44.4% 1,240人


備考)
『在宅死と死体検案 東京都監察医務院長 福永龍繁』 ~死体検案研修会資料より一部抜粋改変
1)全死体検案数の1割は入浴時の死亡
 平成21年度東京23区での全検案数12943件のうち、浴槽内での死亡は1001件あり、洗い場・脱衣場での死亡を含めると入浴中の死亡は約1割
2)入浴中急死の死因
 虚血性心疾患 55% 551例
 脳血管疾患  16% 158例
 溺死     15% 146例
 その他    11% 111例
 不詳     3%  30例
3)剖検例の所見
 約80%に溺水吸引→死亡に対する溺水吸引の関与
 約50%に心疾患→循環器系(心・脳血管)の発作
 約20%に意識消失を来し得る病理学的所見・既往歴・薬物検出は認めない
  →剖検では積極的に証明できない機序も関与(非器質的要因)→血圧低下(のぼせ)の関与?
 約25%に0.5mg/ml以上のエタノールが検出されその過半数は病理学的所見を認めない
 少数ながら向精神薬の薬物の関与→詳細な死亡状況調査(飲酒・薬物の有無)の必要性 

『救急における死体検案』 ~死体検案研修会抄録より一部抜粋改変
1)東京都監察医務院について
 ・東京都23区内で発生した全ての不自然死(死因不明の急性死や事故死等)について、死体の検案及び解剖を行いその死因を明らかにする
・平成25年の年間検案数は13,593体、解剖数は2,338体で、一日平均の検案数は37.2体、解剖数は6.4体である
 ・この検案数は東京都23区内における全死亡者数の18%に相当する
2)法医学会の定める異常死ガイドライン
 ・外因による死亡(診療の有無、診療の期間を問わない)
  (1)不慮の事故 (2)自殺 (3)他殺 (4)不詳の外因死
 ・外因による傷害の続発症、或いは後遺障害による死亡、及びその疑いがあるもの
 ・診療行為に関連した予期しない死亡、及びその疑いがあるもの
 ・死因が明らかでない死亡
  (1)死体として発見された場合 
  (2)一見健康に生活していた人の予期しない急死 
  (3)初診患者が受診後ごく短時間で死因となる傷病が診断できないまま死亡した場合 
  (4)医療機関への受診歴があっても、その疾病により死亡したとは診断できない場合 
  (5)その他死因が不明な場合、病死か外因死か不明の場合
3)医師法第21条
医師は、死体又は妊娠4カ月以上の死産児を検案して異状があると認めた場合は24時間以内に所轄警察署に届出なければならない
「なぜ届出が必要か」
確実な病死以外の死亡では、事故死/自殺/他殺の鑑別には現場状況等の捜査が必要。
医師には捜査権がないため、警察に捜査を依頼する必要がある。